今週のお題「わたしの実家」
田んぼの真ん中の、新興住宅地に建てられた家。
親父が借金をして、やっとの思で建てた家。
小学3年生の時、その家に引っ越した。
それまでは、お隣さんとベニア板で仕切られている様な、いわゆる長屋に住んでいた。
俺はその新しい家が怖かった。浴室も便所も2階にある自分の部屋も。何故か怖かった。
ちょっと記憶にないが、中学生になる頃まで、密かに怖がっていたのかも知れない。
大人になって結婚した。数年間、親と同居してその家に住んだ。
ある日、妻が言った「何となくこの家、怖い」と。
それを聞いて俺は「自分だけではないんだ。」と少し安堵した。
俺達夫婦が、その家から離れた数年後、親父が亡くなった。
独りになった母は「1人では住めない。」と言って、その家を出た。
ほどなく地域一帯が水害に襲われ、その家は床上浸水の被害を受けた。
罹災した家の後片付けに数日を要した。1日だけ、その家の2階に家族で泊まった。
深夜。階下に何かがいる気配を、家族の誰もが感じ目を覚ました。
おそらく水に浸かってしまった為に、建材が歪んだりしてその影響でいろんな箇所が軋んだり動いたりして、音を発しているのだろう。
しかし頭の半分以上は、亡くなった親父が心配して家の様子をを見に来ているのではと、思った。
そして数年後、その家は解体された。
今は、どうなっているのだろう?
何年も帰っていないので分からない。