ひよこの無知独言

日常の営みの中で、考え感じイメージしたことの伝言板

俺はやらないよ。

 うろ覚えで詳細は忘れたが、以前こんな落語を聴いたことがある。
 ある不精な親子がいて、家が火事になった。
「お父つぁん、障子が燃えているよ。」
「面倒くせいや。お前、何とかしろ。」
「オイラも面倒くせいや。」
と、二人は部屋でゴロゴロ。
「お父つぁん、火が天井まで広がったよ。」
「ふーん、面倒くせいや。」
「オイラも面倒くせいや。」
という訳で、二人とも焼け死んであの世行き。
ところが、あの世でも二人は「面倒くせいや」「オイラも面倒くせいや」という調子なので、閻魔様も地獄の鬼達も呆れかえって、再びこの世に送り返されたという話し、だと記憶している。
 その徹底した不精さに、周囲に動じないしたたかさを感じて、とても憧れた。
しかし結婚すると、その不精さ、ダラシなさは夫婦喧嘩の元になる。
奥さんの機嫌を損ねて、それこそ生き地獄に住むことになる。戦々恐々の動じまくり。
その事を、結婚うん十年でやっと気づく鈍感さ。
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 数年前から鼠径ヘルニアを患っていた。
全身麻酔の手術をするというので、色々検査をした。

数日後。
「もう一度、検査をするので出来るだけ早く来院して下さい。」という電話が病院から来た。
別件で肺に影が発見されたという。CT検査、血液検査をした。
影の正体が判明するまで鼠径ヘルニアの手術は中止になった。
「検査結果が出るまでは、経過観察という事になります。悪性か良性かよく判りません。」
と、内科の医師の説明。
最後の「悪性か良性か」という言葉が気になった。「ひょっとしたら癌かも」と思う。

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 『死神は前方からは近づいて来ない。突然に背後から肩越しに囁いてくる。』

確か評論家の小林秀雄がそんなような言葉を記していたように記憶している。

 検査結果を伝えられるまでの日々。
心は静かだったが、相変わらず怠惰に過ごした。やりかけの事が沢山あるのに。

自分が思ってる以上に、とことん怠け者なのだろう。
奥さんは、とても優しく接してくれた。
二人の会話の中に新しい関係を感じた。短いか長いか分からないが大事に丁寧に夫婦関係を築いていこうと思った。
 検査結果。
肺の影は未だに正体不明。
定期的に通院して診察を受けることに。
ただ、血液検査の数値が悪くなかったので鼠径ヘルニアの手術はすることになった。

 ただ翻って考えてみるに、生きていて、やるべき事はあるだろうし、それはやった方が良いだろう。しかし、やろうとする事の中に、やらなくても良い事も沢山あるに違いない。 

これからは、そこを見極め、やらなくても良い事は、やらないで済ます。

「面倒くせいや、俺はやらないよ。」